岩手県公立高校入試 国語 模擬テスト[第1回]
本番と同じ6大問・100点満点。解いたその場で採点され、分野別の弱点が出ます。
一 文学的文章21点
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
祖父の店には、音が積もっている。
引き戸を開けると、まず秒針の音が耳に入る。壁一面の柱時計、棚に並んだ目覚まし時計、修理を待つ腕時計。それぞれ違う速さで動いているのに、しばらく立っていると、一つの大きな呼吸のように聞こえてくる。わたしは小さいころから、この音のなかで宿題をしてきた。
「ひかり、来たか」
奥の作業台から祖父が顔を上げた。ルーペを片目にはめたままなので、片方の目だけがやけに大きい。その顔を見るたびわたしはいつも笑ってしまうのだけれど、A今日は笑えなかった。
店を閉めると母から聞いたのは、昨日の夜だった。
「ねえ、おじいちゃん。本当に、やめちゃうの」
祖父はピンセットの先で小さな歯車をつまみ上げた。米粒より小さいそれを光にかざして、しばらく黙っていた。
「部品がな、もう作られとらんのだ」
それだけ言うと、B祖父はすぐに手を動かしはじめた。作業台の上には、うちの店で一番古い柱時計が横たえられている。この町の駅前でずっと時を刻んでいたものだ。持ち主のおばあさんが先週、これを抱えてやって来た。音が止まると眠れないのだと言って。
「直るの、それ」
「直す」
言い切りかたが、あまりに静かだった。祖父は店を閉めることと、この時計を直すことを、まったく別のこととして扱っている。そう気づいたとき、わたしは自分の質問が急に恥ずかしくなった。閉めるならもう何をしても無駄だと、わたしはどこかで思っていたのだ。
祖父の指が動く。細い軸に歯車が収まり、ぜんまいが巻かれ、振り子が下ろされる。しばらくして、コツ、と音が生まれた。生まれたばかりのその音は、店じゅうの音のなかに紛れて、すぐに見分けがつかなくなった。
Cそれでも、確かに一つ増えていた。
「持って帰るとき、そっとな」
祖父はそう言って、ようやくルーペを外した。両目の大きさが同じに戻った祖父は、少しだけ知らない人のように見えた。
店は来月で閉まる。ここにある音は、いつか散らばって、それぞれの家の壁の上で鳴りつづける。わたしは店の真ん中に立って、目を閉じた。この呼吸を、覚えておこうと思った。
(いわて進路ガイド 書き下ろし)
(1)傍線部A「今日は笑えなかった」とあるが、このときの「わたし」の気持ちとして最も適切なものを、次のア〜エから一つ選びなさい。4点
(2)傍線部B「祖父はすぐに手を動かしはじめた」とあるが、それはなぜか。「わたし」がこのあと気づいた祖父の考え方をふまえて、四十五字以上五十五字以内で書きなさい。6点・記述
(3)傍線部C「それでも、確かに一つ増えていた」の表現についての説明として最も適切なものを、次のア〜エから一つ選びなさい。4点
(4)「わたし」が「自分の質問が急に恥ずかしくなった」のは、自分のどのような考えに気づいたからか。最も適切なものを次のア〜エから一つ選びなさい。3点
(5)この文章全体の特徴の説明として最も適切なものを、次のア〜エから一つ選びなさい。4点
二 説明的文章21点
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
私たちは、ものを「はかる」ことで世界を理解してきた。長さをはかり、重さをはかり、時間をはかる。数字にすれば、離れた場所にいる人とも同じ話ができる。「かなり長い」では伝わらないことが、「二メートル」なら誤解なく伝わる。はかるとは、共有できる言葉を手に入れることである。
ただし、はかるという行為には、必ず一つの手続きが先立っている。A何をはかるかを決める、という手続きだ。長さをはかると決めた瞬間に、色や手ざわりや、それを作った人の時間は、いったん脇へ置かれる。ものさしを当てるとは、対象のある一面だけを取り出して、残りを見ないことにする作業でもある。
この「見ないことにした部分」は、数字になったとたんに忘れられやすい。手元に残るのは数字のほうだからだ。そして数字は比べられる。比べられるものは、いつのまにか優劣として並べ替えられていく。ここに落とし穴がある。Bはかれるものだけを並べたはずの表が、いつのまにかそのもの全体の順位表として読まれてしまうのである。
学校の成績も、町の人口も、一冊の本の売れた数も、それ自体は事実である。事実であることと、それが対象の値打ちを言い当てていることとは、まったく別のことだ。C[ ]、私たちはその二つをしばしば取り違える。数字が正確であればあるほど、取り違えは起こりやすい。正確さは、それが何をはかった数字なのかという問いを、静かに追い払ってしまうからである。
だからといって、はかることをやめよという話ではない。はかることをやめれば、私たちはふたたび「かなり長い」の世界に戻るだけだ。必要なのは、数字を見るたびに、その数字が何を切り取り、何を切り捨てたのかを思い出す習慣である。ものさしは世界の一部を見せる道具であって、世界そのものではない。この当たり前を手放さずにいられるかどうかで、同じ数字がまるでD少ないものにも、豊かなものにも見えてくる。
(いわて進路ガイド 書き下ろし)
(1)傍線部D「少ない」と品詞が同じものを、次のア〜エの傍線部から一つ選びなさい。3点
(2)傍線部A「何をはかるかを決める、という手続き」について、筆者はどのようなことだと述べているか。最も適切なものを次のア〜エから一つ選びなさい。4点
(3)傍線部B「はかれるものだけを並べたはずの表が、いつのまにかそのもの全体の順位表として読まれてしまう」とあるが、そうなるのはなぜか。二十五字以上三十五字以内で書きなさい。6点・記述
(4)空欄C[ ]に入る語として最も適切なものを、次のア〜エから一つ選びなさい。3点
(5)この文章における筆者の主張として最も適切なものを、次のア〜エから一つ選びなさい。5点
三 韻文(短歌)12点
次の短歌A〜Cと、これらについて話し合った生徒たちの会話を読んで、あとの問いに答えなさい。
- A自転車のかごに夕日をのせたまま坂をくだつてゆく金曜日
- B消しゴムのかすを集めてまるめれば今日の分だけ軽くなる指
- C停留所ひとつ手前で降りてみる春の匂ひがしたのだ たぶん
木村 Aは、最後が「金曜日」で終わっているのが印象に残りました。曜日の名前で言い切られると、そこで場面が写真みたいに止まる感じがします。
佐藤 「夕日をのせたまま」もおもしろいですね。実際にかごに乗るものではないのに、まるで荷物のように運んでいる。
木村 Bは「今日の分だけ軽くなる指」がいいと思いました。消しゴムのかすの重さなんてほとんどないはずなのに、[ Ⅹ ]が伝わってきます。
佐藤 Cは最後の「たぶん」が不思議です。せっかく春の匂いを見つけたのに、自分で自信をなくしているみたいで。
木村 でも、そこがいいのかもしれません。三首とも、特別な出来事は何も起きていないですよね。
(1)Aの短歌に用いられている表現技法として最も適切なものを、次のア〜エから一つ選びなさい。3点
(2)会話文中の空欄Ⅹに入る言葉として最も適切なものを、次のア〜エから一つ選びなさい。3点
(3)Cの短歌の「たぶん」には、作者のどのような気持ちが表れているか。二十字以内で書きなさい。4点・記述
(4)会話文の最後の発言をふまえると、三首に共通しているのはどのようなことか。最も適切なものを次のア〜エから一つ選びなさい。2点
四 古文・漢文19点
次の《Ⅰ》の文章と、《Ⅱ》の漢文の書き下し文を読んで、あとの問いに答えなさい。
《Ⅰ》
ある里に、笛を吹くことのいみじう上手なる男ありけり。夜ごとに川辺に出でて吹きけるを、里の人々、寝ながらこれを聞きて、めでたきことに思へり。
ある夜、渡し守の翁、男のもとに来たりてaいふやう、「翁、年ごろこの川を渡し侍り。闇の夜は岸の見えねば、御身の笛の音を頼りにして、舟の向きを定め侍るなり」と。
男、これを聞きて、しばし物も言はず。bやがて涙をこぼしけり。おのれは、ただ人にほめられんとてこそ吹きつれ。かかる用に立ちけるとは、露知らざりき、と思ひけるなり。
その後、男、雨の夜も風の夜も、絶ゆることなく吹きけるとぞ。
《Ⅱ》(書き下し文)
善く射る者は、的の中りしを語らず。人これを問へば、曰はく、「我、風を見るのみ」と。
弟子怪しみて曰はく、「師の技、天下に聞こゆ。何ぞ誇らざる」と。
師曰はく、「的に中つるは矢の事なり。風を知るは我が事なり。我が事を努めて、矢の事を誇らば、次の矢は必ず外れん」と。
(1)《Ⅰ》の傍線部a「いふやう」を現代仮名遣いに直し、すべてひらがなで書きなさい。3点
(2)《Ⅰ》の傍線部b「やがて涙をこぼしけり」の主語として適切なものを、次のア〜エから一つ選びなさい。3点
(3)《Ⅰ》で、男が涙をこぼしたのはなぜか。最も適切なものを次のア〜エから一つ選びなさい。4点
(4)《Ⅱ》で、師が「風を見るのみ」と答えたのはなぜか。最も適切なものを次のア〜エから一つ選びなさい。4点
(5)《Ⅰ》の男と《Ⅱ》の師に共通する、技に対する考え方を、五字以内で書きなさい。5点・記述
五 資料の読み取りと作文15点
次の《資料》を見て、あとの問いに答えなさい。
※この資料は模擬テスト用に作成した架空のデータです。
(1)《資料》から読み取れることとして最も適切なものを、次のア〜エから一つ選びなさい。5点
(2)《資料》から読み取ったことをふまえ、家庭学習を続けるためにあなたが大切だと考えることを、次の条件にしたがって書きなさい。10点・作文
条件
① 二段落構成とし、第一段落には《資料》から読み取ったことを書くこと。
② 第二段落には、①をふまえて、あなたが大切だと考えることを、体験や見聞をまじえて書くこと。
③ 七行以上十行以内(一行二十字換算で、およそ百四十字以上二百字以内)で書くこと。
六 漢字12点
次の(1)〜(3)の傍線部の読みをひらがなで書き、(4)〜(6)の傍線部を漢字で書きなさい。
(1)後輩に仕事を委ねる。2点
(2)厳かな雰囲気に包まれる。2点
(3)実験の結果を吟味する。2点
(4)自分の役割をハタす。2点
(5)セイミツな機械を扱う。2点
(6)会議の開始をエンキする。2点
記述・作文の自己採点を入力すると点数が更新されます
| 分野 | 得点 | 配点 | 判定 |
|---|
記述・作文の自己採点
解答例と採点基準を読んで、自分の答案に何点つけられるかを選んでください。 入試の記述は「全部合っているか」ではなく「必要な要素がいくつ入っているか」で部分点が決まります。 厳しめにつけるほど、本番の点数に近くなります。
▼ あなたの解答から、次の一手が見えます
点数はわかった。
あとは、どこを直すかだけ。
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