2026年6月|plusLINK編集部
📚 進路の本音シリーズ
- vol.1「とりあえず大学」でいいの?
- vol.2 AIが進む時代と現場技術者
- vol.3 企業が求める即戦力・専門知識
- vol.4 推薦のためのランクダウンを問い直す
- vol.5 将来の自分と家族、県外就職、そして自分と向き合うこと(この記事)
「将来どこで働きたいか」——この問いに答えられる高校生は、実はそれほど多くありません。
県外に出たいけど親に悪い気がする。地元に残りたいけど、それは本当に自分の意志なのか自信がない。お金のことも、家族のことも、全部が絡み合って、考えるのが怖くなる。
でもその「怖さ」から目を背けたまま進路を決めると、後になってもっと大きな後悔が来ます。このコラムでは、岩手の高校生が避けて通りがちな「自分の将来と真剣に向き合うこと」について、正直に話します。
県外就職の利点と欠点——正直に整理する
まず、感情論を抜きにして県外就職の現実を整理します。「県外に出ることが正解」でも「地元に残ることが正解」でもありません。それぞれに本物のメリットとデメリットがあります。
✅ 県外就職のメリット
- 給与水準が高い(首都圏は岩手比+20〜40%の場合も)
- 業種・職種の選択肢が圧倒的に広い
- IT・金融・メディアなど岩手に拠点のない業界へのアクセス
- 多様な価値観・人脈との出会い
- 「地元の目」を気にせず自分らしく生きやすい
- スキル・実績を積んでから地元に戻る選択肢も残る
⚠️ 県外就職のデメリット
- 生活費が高い(東京では家賃だけで月8〜12万円)
- 親の病気・介護が必要になったとき対応が難しい
- 盛岡・岩手のコミュニティから離れる孤独感
- Uターン転職時に地元での実績・人脈がゼロからになる
- 給与が高くても可処分所得は岩手より低いケースも
- 地元のお祭り・行事・友人との時間が失われる
「東京に出て給料は上がったけど、家賃・交通費を引いたら手元に残るお金は岩手にいた頃とほぼ同じでした。それに、盛岡に帰るたびに自分の居場所が少しずつ薄れていく感じがして、それが一番つらかった。」
— 盛岡出身・東京在住(30代・IT企業勤務)取材より
「地元に残ることを選んで後悔していません。給料は高くないけど、親の顔が見える距離にいられること、地域のことを仕事にできていることが、自分にとって一番大切だったとわかった。」
— 盛岡市内・公務員(20代)取材より
どちらの声も「正解」です。大事なのは、自分がどちらの優先順位を高く置いているかを、感情ではなく言葉で整理できているかどうかです。
家族との関係と進路——避けられない問い
進路を考えるとき、多くの高校生が「家族にどう思われるか」を強く意識します。それ自体は自然なことです。しかし、家族との関係が進路選択に影響するパターンには、健全なものと不健全なものがあります。
親の「期待」と自分の「意志」を分ける
「親が地元に残ってほしいと言っている」「親が大学に行けと言っている」——これらは親の期待であって、あなたの意志ではありません。
親の期待に応えることが悪いわけではありません。でも「親に言われたから」という理由だけで進路を決めると、うまくいかなかったときに誰かのせいにしやすくなります。自分で選んだと言える進路でなければ、困難に直面したときに踏ん張る力が出てきにくいのです。
「親に反対されたくなくて、言われた通りの大学に行きました。でも入ってみて全然やりたいことじゃなかった。親のせいにしたくないけど、自分で選べなかった後悔がずっとある。」
— 岩手県出身・大学中退(20代)取材より
介護・家業・経済的事情——現実から目を背けない
一方で、家族の事情が進路に影響することは「しょうがないこと」ではなく、向き合う必要がある現実です。
祖父母の介護が必要になりそう、家業を継ぐ可能性がある、家庭の経済状況が厳しい——これらは無視できません。しかし「家族のためだから自分の夢は諦める」という結論に急ぐ前に、一度立ち止まって考えてほしいことがあります。
- その事情は今すぐ対応が必要か、それとも将来のことか
- 自分以外の選択肢(兄弟・親戚・外部サービス)は本当にないか
- 家族と直接話し合ったことがあるか
- 「家族のため」という言葉が、実は自分の決断から逃げるための言い訳になっていないか
「自分と向き合う」とはどういうことか
「自分と向き合え」とよく言われますが、具体的に何をすればいいのかわからない人がほとんどです。それは当然で、自分と向き合う方法を誰も教えてくれないからです。
私たちが考える「自分と向き合う」とは、次の問いに正直に言葉で答えることです。かっこいい答えでなくていい。「わからない」も一つの答えです。
🔍 自分と向き合うための7つの問い
- 10年後、どこで誰と何をしていたら「いい人生だ」と思えるか?
- お金・安定・やりがい・人間関係のうち、一番大切にしたいのはどれか?
- 「絶対にやりたくない仕事・生き方」は何か?
- もし親の期待が一切なかったら、何を選ぶか?
- 岩手(地元)に残ることに、本心でどう感じているか?
- 失敗しても取り返せると思えるリスクはどこまでか?
- 5年後の自分に「あの選択はよかった」と言ってもらえる進路は何か?
これらの問いに即答できなくて当然です。高校生が全部を言語化できるほど人生は単純ではありません。でも「考えたことがある」と「考えたことがない」では、その後の進路の質がまったく違います。
岩手を出ることと岩手を愛することは矛盾しない
岩手で育った人の中には「県外に出ることへの罪悪感」を持っている人が少なくありません。地域への愛着、親への申し訳なさ、「岩手を捨てる」という感覚。
でも、はっきり言います。岩手を出ることと、岩手を愛することは矛盾しません。
県外で力をつけて、岩手に戻ってくる人がいます。県外で岩手の良さを発信し続ける人がいます。県外から岩手に投資・支援する人がいます。そういう人たちが、岩手という地域を外から支えています。
一方で、岩手に残り続けることで地域のインフラを支え、次の世代を育て、地域の文化を継承している人たちがいます。その貢献は県外に出た人と同じくらい、あるいはそれ以上に価値があります。
将来を深く考えることは、今すぐやる必要がある
「まだ高校生だから」「大学に入ってから考えればいい」——そう思っている人に伝えたいことがあります。
大学に入ってから考え始めると、就活という締め切りが来たとき、深く考える時間がなくなります。焦りの中で「とりあえず内定」を選んでしまう。そしてまた「なんとなく」の人生が続く。
高校生のうちから将来を深く考えることは、早すぎるのではなく、ちょうどいいタイミングです。答えが出なくていい。問い続けることが大切なのです。
「高校のとき、もっと真剣に自分のことを考えておけばよかったと思います。あのとき誰かに『お前は本当は何がしたいんだ』と問い詰めてほしかった。」
— 30代・転職経験者(盛岡出身)取材より
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